皆さんこんにちは。15万本以上の爪を施術してきたネイリストでスキンケアカウンセラーの川上あいこです。ネイルサロンは不思議な空間。手を握り合ったまま過ごす約2時間。
念ずれば叶う?
ずっと気になっている。その人の手首。
確かに流行っているし、確かにかわいいし、確かに効果もありそうだ。
「なんかまた、連絡途絶えちゃったんだよね。」
そう言ってため息をつくその人の両手首には、様々な色に光り輝くパワーストーンのブレスレットが何本も巻き付いている。
恋愛に効果があるといわれるローズクォーツを筆頭に、金運・財運・健康運、全てをまかなうとされる水晶まで果てしなく連なっている手首を、ついつい見つめてしまう。
「それはきっと、縁がなかったんですよ。」
慰めにもならないような返答しか出来ない自分に飽きれつつ、話に耳を傾けるしかない。
「こないだもパワースポット行ったのになぁ。あいこさん知ってる?広島にね、結婚できるって有名な神社があるの。友達と2泊して毎日行ったのに、全然効果ないよね!あそこダメかも!」
「効果があったから連絡こなくなったのかも!その人じゃないってことですよ。」
そう答えながら、美しいその人の美しい指に色を塗る。
髪も肌も爪もとても綺麗だ。もう少しで30歳を迎える余裕と、誰もが知っているような会社で働いてるプライドと金銭的な余裕も相まって、元々整った顔立ちとジムで鍛えたスタイルも更に輝いてる気もする。
「どこで出会えるんだろうなぁ。そろそろ結婚しないとやばいよね。」
そうため息をつく姿もこんなに美しいのに。
「選考基準が厳しいんじゃないですか?選びすぎとか。」
「そんなことないんだけどなぁ。仕事してて、健康で、真面目な人でいいのに。なんで出会いがないんだろう?どこで出会えるんだろうなぁ。来月も京都の神社に行くんだけどね、出会い運UPするかなぁ?」
そう悩むその人の手首にジャラジャラと連なるパワーストーン。首にも、パワーストーンのネックレス。カバンには、恋愛成就のお守り。携帯にもパワーストーンのストラップが揺れている。
「あ、でもね。すっごい有名な占い師さんに見てもらったら、今年中に結婚できるって言われたんだよ。」
占い師から買ったというお守りも見せて貰った。
「えー!楽しみですね。あ、でも、あんまりパワーストーンとかお守りをいっぱいつけると神様が喧嘩しちゃうらしいですよ!1つに絞るといいのかも。」
そんな受け答えしかできない自分にやはり呆れつつ、毎日願われる神様の大変さを想った。
出会いって、パワースポットや神社ではなく、会食の席や趣味の場にあるはずなんだけれど、それを言ってもいいのだろうか?
仕事していて、健康で真面目な人って、多分周りにたくさんいるはずなんだけれど、それを言ってもいいのだろうか?
答えに悩みつつ時間だけが過ぎてゆく日もあるのだ。
おわりに
毎日、たくさんの恋のお話しを聞くけれど、目の前にある現実世界で起きている恋愛のお話ならまだしも、目に見えない神様や「パワー」に対する効果が話題に出ると答える言葉に悩む。
どんなに美しくても優秀でも、左右の手首に10本近いパワーストーンが巻かれていて、カバンも携帯もお守りだらけ。話題は、有名なパワースポットや占い師の話し。そんな状態こそが「恋愛」に一番遠いと思えるのは、筆者だけだろうか?
出会いを広げたいなら、自分の行動範囲を広げるしかないわけだし、誰かに好きになってもらう為には、見た目の美しさだけじゃない、人間としての中身の成長や価値観の拡大、知識の増量など、やるべきことはたくさんある。
人って、自分が知らないことを知っている人や、自分の好きなものを同じように好きでいてくれるような人に興味を持ったりする。「この人面白い!」「この人ともっと話してみたい」そんな興味が“二人で会う時間”を生み出すのだと思う。
個人的には「神様に祈ったから」「お守りを持ったから」誰かに好かれるっていうことはないと思っているせいか「パワースポットに行ったのに出会いがない!」と言われると、返す言葉につまってしまうのだ。
出会いが欲しいなら、外に出てたくさんの人に会おう。
自分に興味を持って欲しいなら、たくさんの知識や情報を身につけよう。
2人で会う時間を作りたいなら、相手がまた会いたくなるようにその瞬間を楽しいものにしよう。
「この子といるとなんか楽しい。また会いたい。」恋の入り口ってそんなものじゃないだろうか?
ちょっとだけ運命の出会いに期待してしまう気持ちもわかる。
偶然転んだ街角で、助けてくれた相手がイケメン。目が合った瞬間にお互い恋に落ちる。そしてなぜだかまた偶然に、カフェで再会するのだ。
職場でもいい。「もう会えないだろうな。」て思っていた彼が、偶然自分の会社に配属されてくるのだ。しかも、自分の席の隣に配置されたりして。しかも、実は社長の息子だったりして!!
あぁ!確かにこれを運命と呼ばずしてなんと呼ぶのか。こんな運命は、パワースポットやパワーストーンの成せる技かもしれないけどもね。
夢を見るのは自由として、現実社会では、初対面で会った相手をびっくりさせない為にもパワーストーンの類いはせめて1本にした方がいいと思う。恋を発展させたいならなおさら。
神頼みも楽しいけれど、頼むだけじゃ目の前の現実は変化しないのだから。
(川上あいこ/ライター)
(古泉千里/モデル)
(柳内良仁/カメラマン)