皆さんこんにちはわ。15万本以上の爪を施術してきたネイリストでスキンケアカウンセラーの川上あいこです。ネイルサロンは不思議な空間。手を握り合ったまま過ごす約2時間。
手を握り合っているからなのか、リラックスした密室空間がそうさせるのか、秘密の内緒話しを打ち明けて下さる方がとても多い場所でもあります。
親しいのに友人関係ではない。もしかしたら来月は会わないかもしれない。
近くて遠い関係だからこそ、プライドも恥もなく自分の真っ黒な本心さえも吐き出せてしまうのかもしれない。そんなサロンワーク中のみんなの恋のお話を切り取ってお送り致します。
※許可を頂いたものだけ掲載しています。
※個人を特定できる情報が含まれないよう職業等にフィクションも織り交ぜています。ご了承ください。
リベンジポルノの危険
「あいこさん、携帯で裸って撮ったことある?」そんな一言から始まったその日。
「裸??自分の裸ですか?誰かの裸?」
手を動かしながら素っ頓狂な答えを返している私の脳裏には、赤ちゃんの頃の息子の裸写真が僅かにかすめていた。
「自分の。自分の裸。」
困ったような、飽きれたような声のお客様は少し笑いながら元カレの話しをしてくれた。
前の彼がさ、付き合って半年目くらいから、会えない日に裸の写真を送れって言ってくるようになったんだよね。最近リベンジポルノ系の事件多いじゃない?なんだか思い出しちゃって。
何度か撮ろうかとチャレンジはしたんだよね。彼が「会えない時も君を感じたい」とかなんとか言うもんだから努力はしたのよ。一応。すごく好きだったし。
でもさ、冷静になってみてよ。30歳すぎた女が、ちょっと垂れ始めた胸元に携帯向けてんだよ?もしくは、大股開いて携帯向けてんの。ちょっと暗いから照明たいちゃう?とか真剣に考えつつ。
そんな自分を冷静に想像したら萎えてきちゃうわけ。何やってんのかな?自分、て。
「照明要りますよね。どうせなら美肌に撮りたいし。って、こだわるとこはそこじゃないですが。」
そうなのよ、その頃の携帯なんてガラケーで写りも悪くてさ。彼からは何度も写真の催促がくるんだけど「恥ずかしいから」とかなんとか言っちゃって誤魔化し続けたわけ。
結局、SEXの最中も写真を撮らせろって言ってくるようになったから別れちゃった。裸をカメラに収めたいって一種の性癖だと思うんだけどね。性癖に付きあわせるならセンスも必要なんだなぁーて思った。「写真を撮らせろ」だけじゃ無理だよね。自分の性癖を押し付けてるだけだもん。
うまく写真を撮ってしまう男は、誘う一言にもセンスがあるのかもなぁ・・・て思って。ニュース観ながら、あの時の男にセンスとか、怖いくらいの強引さがあったら私も写真撮られてたかもなぁ、て思ったんだよね。「断って嫌われたらどうしよう。」て怖かった自分もいたし。
よく「撮らせてしまう女も悪い」てコメントも多いけど、実際にそうなんだけど、例えば、芸術の1つとして求められてたらあの時断れなかったかもなぁーて思う。
「芸術かぁ。モデルとして君を美しく撮りたい、とか?」
そうそう。「君の筋肉が少し汗ばんだ時は本当に美しい」とか「君の裸体をモノクロで表現させてくれ」とか「写真展に出したい」とか何とかさ(笑)そしたら、少し撮らせてもいい気になっちゃうよね。危ないよね。
言葉にセンスのある男。いい雰囲気にセンスのある言葉を重ねられると判断能力が鈍る気がする。
「田んぼの真ん中で、特に話すことはなくても横顔見てるだけでキュンキュンくるような男にしないとだめかもですね。」
口のうまくない男ってこと?(笑)
相手は誰でも良くて「性癖への欲求」と「愛情みたいなもの」をうまく交わらせて、自分を求めてる人は危ないと思う。何にせよ、あの時写真を撮らなくて本当に良かったけど。
「逆に考えたら、写真フォルダーが男のチ●コ写真ばっかりの女がいたら嫌だと思うんですけどねぇ。カメラに収めたい性癖の男の人なら、そんな趣味もわかってくれるのかな?」
おわりに
性癖って、お互いの希望が一致していればこの上なく幸せで二人の世界に浸れるものでもあるのに、ひとたび全く違う性癖の二人が出会ってしまったらYESとNOの壁は高い。
好きな男の言うことなら、なるべく叶えてしまいたくなる。強引さにうまく断れない時もある。
どうしても断れなかったり、彼とのSEXのスパイスの一つみたいに感じて、つい写真を撮らせてしまったことがある人も少なくないのではないかなと思うけれど、世界中で起こるリベンジポルノ事件を見ていると裸の写真の危険性は一目瞭然なのだ。
確かに、言葉にセンスのある男はクラクラする。言葉にセンスのある男は頭に残る。
顔も身体も決してタイプではないような、例えばそんな相手であっても、言葉にセンスがある男との会話の駆け引きは、まるで恋愛小説の主人公にされているような気分にすらなってくるから不思議だ。
離れた夜すら自分を求めている・・・そう感じたらたまらなく愛おしく感じる気持ちもわかるし、自分の身を守る為には雰囲気に流さない女でいることが大切だと重々わかっていても、なぜかムードに流されてしまう夜もある。そんな、「自分の価値観さえ揺らいでしまう瞬間」をも危うく含むのが「恋愛」でもある。
でも、リベンジポルノの危険性と天秤にかけるにはあまりにも危険だ。
相手が嫌がっているのに、愛情と言う言葉を土台にして強引に自分の性癖を押し付ける相手は至極危険だ。
裸の写真を求められたら一度確認してみて欲しい。「あなたのモノも撮らせて」。そして、その写真を毎日眺めてうっとりしている自分をも愛してくれるのかと確認してみて欲しい。携帯の写真フォルダーが彼のご自慢の1本ばかりの彼女でも愛してくれるのだろうか?
元彼コレクションの中の「記念の1本」になってくれるのだろうか?
それで喜んで撮らせてくれる彼なら、お互いの恋愛価値観の確認作業が改めて必要かもしれない。
それから、裸の写真を求められたら一度想像してみて欲しい。
素っ裸で照明焚きつつ、己の股の写真を撮影している自分の姿を。
皆さんはどんな恋をしていますか?
(川上あいこ/ライター)