今月はいくつかの恋愛相談をもとにお届けしています。今回は「彼と別れたいと思っているけど、別れることができない。
■別れってつねに「あなたが成長したから」
恋愛相談って、1つひとつ個別のことが書かれています。がしかし、「彼と別れたい」と悩んでいる人の「別れたいと思う原因」って、1つに集約されるように思います。
たとえばほかに好きな人ができたから別れたいとか、彼のことが幼く見えてきて、わたしはもっとオトナな彼氏とつきあいたいとか、彼のイヤなところが見えてきてもう一緒にいたくないとか、別れたいと思う理由はさまざまありますが、そういうのってすべて「あなたが成長したから」です。
成長する前の彼はとても理想的な彼氏でした、でもわたしが成長したから、わたしにはほかの男子のほうが魅力的に感じられるようになりました。だから彼と別れて、ほかの男子と交際したいと思います……というふうに「あなたが成長したから」。
彼のイヤなところが見えてきた、というのだって、昔と今とで、あなたが彼の中に見ているものが変わったから、あるいは見たものを解釈する能力に変化があったから、でしょう。つまり「あなたが成長したから」。
別れを切り出される側より、別れを切り出す側のほうが、成長に敏感なものです。だから「別れよう」と言われた人は傷つくわけです。そして言われた側は、時間が経ったのちに漠然とではあっても、別れの理由に気づき、納得するのです。
■悩まなくていい、切なくなるだけでいい
「彼と別れたいと思った時=あなたが成長したとき」ということは、あなたが小さくなった洋服を脱ぎ捨てて、新しい洋服を着ざるを得なくなったとき。だから悩まなくていい、切なくなるだけでいい、ということ。
いかに悩んだところで、人はいつまでも小さくなった洋服を着続けることができないですよね。どこかのタイミングで小さくなった洋服を脱いで、新しい洋服を着る、というのが当たり前ですよね。
ただ、小さくなった洋服に愛着はあるはずです。つまり別れを告げなくてはならない彼氏に、愛着(というか情)はあるでしょう。そういうときは切なさに心揺らしておくといいように思います。切なさに心揺らせていたら、そのうち収まる場所に収まるから。
この、切なさに心揺らす、というのが、別れを切り出された彼に対する、今現在における精いっぱいの謝辞では?
■あなたが精いっぱい耐える限りにおいて
人は誰だって、じぶんでも気づかないうちに心が成長します。あなたはなにも「彼と別れてやろう」と意地悪なことを考えて成長したわけではないですよね?気がつけばどことなく彼とすれ違うようになって、どことなく新しい生活(新しい恋)をしたいと思うわたしがいた、ということですよね? そういうじぶんを否定しても、なにも始まらないですよね。
可能であれば、成長したあなたに彼が追いついて、ふたたびおなじレベルから、おなじ方向を向かってふたりで歩みたかったりもするかもしれませんね。でもおなじレベルでおなじ方向に一緒に歩くということを、彼に強制することはできない。彼には彼の人生があるから。
彼と別れたいと思ったときとは、ふたつの人生がほぼ間違いなくすれ違っていくとき。それをわたしたちはどうすることもできないし、それでいいんです。切なさに胸ふさがれる思いに、あなたが精いっぱい耐える限りにおいて。(ひとみしょう/文筆家)