ネイルサロンは不思議な空間。
◇恋のはじまりの話
「理想の恋の始め方ってないですか?」マユハさん(仮名)がおもむろに質問してきた。
ランチ後の午後、眠くなった瞼が少しずつ落ちてくるのに必死に耐えているはざま。
夢見がちな気分もあるせいか夢のようなことを質問してくる。
「なんか話したいことがありそうだな」なんて思いつつ、核心には触れず。
「どんな恋の始まりが理想ですか?」なんて聞いてみる。
「用がないのに電話が来るのが好きなんですよねぇ….」
なにかを思い出しているマユハさんの話しに、相槌も少なめに耳を傾けてみた。
「電話がくると”お?!”て思うじゃないですか。何の用かな?て。電話がくるだけでもちょっと嬉しいんですけど、話し始めたときに”あれ?この人、特に用がない?”て気付いたときに、本当にうれしかったりして。それと、電話の向こうで何か用件を作ろうとして話をしようとしている姿が見えるとかわいくて堪らないんですよね。」
たしかに。
「あれどうだった?とか、へー!とか、別に今話さなきゃいけないようなことじゃないのに一生懸命話してるとこ感じると”声が聞きたかったのかな?”てうれしくなるですよ。そういう恋の始まりがいいですー」
たしかに。
「でも、電話がきて”お??”て嬉しくなる時点で、すでに恋が始まってません?」
マユハさんの言いたいことがわかった気がしてあえて声にしてみる。
「……..やっぱりそうですかね?」
「はい(笑)」
「私、好きな人できたかも(笑)」
「良かったですね!」
恋の始まりって、自分が相手を気になっていることはわかっても、この気持ちが「好き」てことなのか、ただドキドキしちゃってるだけなのかわかりにくい。
あまりにも簡単にドキドキしちゃうと「私、惚れっぽい?!」なんて不安になることもあったりして。
「あの人を好きになった」て、なんだか簡単には言えないこともあったりして。
でも「好きだ」と思える相手にたくさん出会えることって胸を張るべきことだし、友情でも恋愛でも誰かを「大好きだー!」と思えることってすごくいいことだ。
「なんかもう両思いっぽいし、このあとのアクションどうするんですか?」少しニヤつきながら問いかけてみる私。
「え(笑)どうしよう。どうしたらいいですかね?」マユハさんもニヤつく。
「ご飯誘ってみるとか?」
「えー向こうから誘われたいなぁ(笑)」
「じゃ、誘われるように会話してみるとか?」
「難しい!どんな会話にすればいいかな?」
恋の始まりって楽しい。
恋愛は楽しいことばかりじゃないってわかってはいても、それでもやっぱり恋は楽しい。
駆け引きはしない方がいいけれど、恋のすすめ具合いをシュミレーションしながら話す時間って、楽しい未来ばっかり見えちゃう。
「やーどうしよう!ご飯とか、着てく服とかない!」
すっかり「行く気」になっているマユハさんですが、まだ誘われても誘ってもいません(笑)
◇おわりに
誰かを好きになることが多いと「惚れっぽい」とか「恋愛体質」なんて言われがちで、恋の始まりって「まだみんなに話さないほうがいいかな?」なんて気が引けるときもあったりする。
このご時世もあるかもしれないけれど、人間は「悪口」こそ盛り上がりがち。
だからこそ「誰かの好きなところ」を見つけられることが得意だったり、
「あの人のここが好きだ」て話をしながら時間を過ごせることって、とても
大切だと思うのです。
恋の始まりを「えーあんなのどこがいいの?」なんて人の恋路にいちゃもんから入る人はさておき、恋の始まりこそ、彼のいいところを話す時間をたくさん作ってみてくださいね。(川上あいこ/ライター)