恋は15分後にやってくる
ひと目惚れのタイミングから遅れること14〜5分後。
ようやく見えてきた相手の言動に、第一印象が180度好転する”14〜5分後惚れ”ってのがあるんじゃないだろうか?
ある日、男友だちに連れて行ってもらったカフェで、若き店主の男の子を紹介された。少しぽっちゃりな大柄で、個性的なメガネを掛けていて、感じの良い印象だったけど特にこれといって何も感じなかった。
けれど、それから14〜5分経ってから。彼と男友だちが取るに足りない会話をしながら笑い合っているのを見て、それこそひと目惚れしてしまうときみたいに「ドきゅん!」とトキメイてしまったのだった。
なんで14〜5分後(笑)?
それはたぶん……「人は見た目が9割」とか言われているけど、残り1割の”その人らしさ”を認識できるまでって、どうしても14〜5分は掛かってしまうのではないだろうか?
朝ドラの「連続テレビ小説」も15分でちょうど一話。物語同様、人ひとりのストーリーを伝え人柄を感じられるには最低およそ15分は必要なのかもしれない。
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そして、なんだかこの彼とふたりきりでいたら楽しそうだなぁ、と想像してぐふっとしてしまった。
ふたりきりでいるところを想像してぐふっとなったら恋だ。と、思う。
その人と一緒にいるところを想像するということ……それはつまり、少しでもその人を”恋愛対象”として見ているということだ。全然興味のない男子とのデートをひとりでに想像してしまうことって、ないもの。
そしてさらに、そこにぐふっとなるということは、ドキドキできる相手だってことだ。
……となればその症状はもう、彼に恋していると言ってしまってよかった。
店内の薪ストーブで彼が焼いてくれた焼き芋は、すごくホクホクとおいしくて、写真撮らせて! と撮ったけど実は、すぐそばに腰掛けていた彼の足元も一緒にこっそりファインダーにおさめていた。
14〜5分前はなんとも思っていなかったのに、今ではその写真を見返す度にぐふっとなっていた。ポカポカと暖かいストーブの前で、彼との恋を期待しながら。(大島智衣/脚本家、エッセイ・コラムニスト)