皆さんこんにちは。15万本以上の爪を施術してきたネイリストでスキンケアカウンセラーの川上あいこです。ネイルサロンは不思議な空間。
手を握り合っているからなのか、リラックスした密室空間がそうさせるのか、秘密の内緒話しを打ち明けて下さる方がとても多い場所でもあります。
そんなサロンワーク中のみんなの恋のお話を切り取ってお送り致します。
※許可を頂いたものだけ掲載しています。
※個人を特定できる情報が含まれないよう職業等にフィクションも織り交ぜています。ご了承ください。
◇騙されるには大から小まである
「あいこさん、騙されたー」いきなりどうしたのリオさん(仮名)? 何がどうなって、いつ誰に騙されたの? 「騙された」て大から小まである。「事によっては警察行かないと」なんてことまで脳裏に浮かぶ。
「彼氏にお金取られてた」
一番嫌なパターンのお話だった。
◇「会いたい」の魔法
リオさんの彼はマスコミ関係の人で、とにかくなかなか会えないというのは聞いていた。だからこそ、終電も終わった頃に「会いたい」と言われれば、リオさんはタクシーを使ってでも彼に会いに行っていた。
「疲れてるのに移動させるのかわいそうじゃないですか?」
時にはお弁当を作って、時にはお酒を買って、彼の元へと足しげく通っていた。
「でも、こないだ気付いたんです。彼の家に行くと、必ずお財布からお金がなくなってるんです。少しだけなんですけど」
「まさか」と思いながら、お札の隅に小さく数字を書いておくことにした。
「まさかね」彼の家から出てから確認すると、必ず何枚かお札がなくなっている。
書いたはずの数字がいくつか途切れている。
「仕事忙しいのに、給料足りてないのかな?」自分の数え間違いかもしれない。
彼の「会いたい」も会ってからの彼も、嘘をついているようには見えなかった。
連絡がつかないときだってあったけど、仕事中であれば仕方がないことだし、スタンプだけでも返してくれることもあったし、時間が見えたらいつだって会おうとしてくれた。
彼を信じたい。
そんな気持ちで、会えないはずの日に彼の家に行ってみたら、会えないはずの彼の家の電気がついていたのだそうだ。
◇どんなに忙しくても
「家に行ったら、女の人がいたんです。なんか、そっちが3年くらい付き合ってる本命だったらしくて」
ちょっと笑って話すリオさんだけれど、返す言葉がない。
「彼女との生活の為にお金抜かれてたかと思うともう・・・」
なんだかすごく悔しい。リオさんはお客さまで、友達なわけではないけれども、心から悔しくてやるせない気持ちになる。
「騙される方がバカなんだ」とか「見る目がなかったんだ」なんて言いたくないし、人を信じる純粋さの何が悪いんだと言いたくなる。
◇おわりに
好きだと優しくしたくなる。でもそれは、相手だって同じはず。彼が好きでいてくれるなら、リオさんが彼を気遣うように彼だって気遣っただろうし、会いたければ彼だって飛んできても良かったはずだ。
好きな気持ちは色んなものを見えなくする。彼のちょっとした一言を「愛」と勘違いしてみたりして。
でも「信じる気持ち」と「現実を見ないこと」は同じじゃない。
連絡が途絶える彼、会いたいとは言っても会いに来ない彼、会ったときだけ優しい彼。信じたくなるけれど「現実」を正面から見ないと、大切なことを見逃すことがある。
どんなに忙しい人だって、好きなら連絡は途絶えない。
総理大臣だって、鬼の忙しさでも会いたい人には会いに行く。
甘い言葉とか、肌のぬくもりとか信じたくなるけれど、時には目をつむって耳を塞いで、彼の愛情と行動が比例しているのか感じてみた方がいい。
言葉よりぬくもりより「信じられる彼の姿」を見つけるために。(川上あいこ/ライター)