恋をすれば、おそらく誰でも知ることになる問題のひとつに「昇りつめた気持ちはどこに行くのだろう」という問題があるかと思います。
彼はまず仕事を覚えなくてはならない。
若い彼の場合――たとえば20代前半の彼の場合、彼は(当然)恋愛にうつつを抜かすだけ、というふうにはなれないはずです。彼はまず仕事を覚えなくてはならない。
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彼がいま大学生で、どこかの居酒屋でかっこよくアルバイトをしているとしても、その彼はいずれどこかの会社に就職をすると思います。
就職してしまえば、若くして居酒屋でかっこよくアルバイトをするというのとはちがって、そこにはダサいことがいっぱい待っています。
仕事の基礎を覚えるというのは、身をもって社会の成り立ちを学ぶということだから、アルバイトとはちがって、好むと好まざるとにかかわらず、責任をたくさん背負わなくてはならない。当然、彼女が知ればダサく思えるようなことも、彼はやらざるを得ない。
結婚して主夫になる?
つまり彼は、彼女とどんなにラブラブでも、「社会の洗礼」を受けて、それをどうにか乗り越えないといけない。
女子だって、当然このようなことがあると思いますが、結婚して主夫になるという選択肢が、まだまだマイナーなこの日本の世の中にあっては、おそらく男は女子よりも「ダサい」ことをたくさんやらないと、世間から一人前と認められないようになっている。
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だから彼は、彼女のことをちょっと脇に置いて、とにかく仕事をどうにかしようとがんばる。
だから彼にとって、恋愛は(彼女のことは)、愛すべきもののひとつにすぎなくなる。
彼女とおなじように(あるいは彼女よりちょっと下のレベルで)自分の仕事も、自分の仕事のお客さんのことも愛さないと、とてもじゃないけれど、一人前になれない。
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もちろん一人前になどならず、半人前のまま彼女と結婚してしまうという選択肢もあるわけですが、多くの男は、結婚したら妻を(家庭を)支えなくてはならないと考えているから、どうしても仕事のことを第一に考えるようになる。
だからどんなにラブラブなカップルであっても(あるいはラブラブだからこそ)、彼は彼女のことを、諸手を挙げて1番だとは、なかなか言いづらいわけです。
せいぜい良く言って「彼女を愛することは前提条件」であり、その前提で「仕事が1番」となったりする。
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だから、ある種の女子は年上男子に群がるのだろうと思います。
年上男子は、すでに仕事の基本を覚えているので、愛することに余裕がある。
仕事を愛するのと「おなじかそれ以上に」彼女のことを愛することができる。
「彼にとっての1番」になりたい女子は・・・
結婚したら主婦になります、という考えを「ふつうに」人生の選択肢に入れることができる女子と、そうではない男子とでは、仕事に対する考え方がまるっきりちがうものです。
結婚してもずっと仕事を続けたいと思っている女子は、男みたいなもので、やっぱり彼のことと仕事のことを同時に愛してしまうでしょうから、彼が1番というふうにはなりづらいのではないかと思いますが、とにかく主夫という選択肢をきわめて選びづらい男にとって、彼女は「おれの1番」とは、なかなかいかないのです。
「彼にとっての1番」になりたい女子は、彼に主夫という選択肢を与えるか、さもなくばうんと年上の精神的に余裕のある男を探して恋したほうが、まだマシかもしれません。(ひとみしょう/ライター)