皆さんこんにちは。15万本以上の爪を施術してきたネイリストでスキンケアカウンセラーの川上あいこです。ネイルサロンは不思議な空間。手を握り合ったまま過ごす約2時間。
忘れられない彼
「あいこさんって忘れられなかった彼いますか?」ケイさん(仮名)に唐突に聞かれた。
忘れられない彼か・・・いないかも。全員覚えてはいると思うけど、正直、歴代の彼氏の記憶は薄れていて、その記憶が正しいのか正しくないのかさえおぼろげだ。
「いいなぁ。私、どうしても前の彼が忘れられなくって」
忘れられない程の彼ってどんな人?ちょっと聞きたくなってしまった。
彼の記憶
彼とは大恋愛で、ずっとずっと好きで、やっと付き合って、顔も好みだったし本当に理想の人で。いやらしい話、職業も好きだったし、次男だったし、身長も体型も何もかも好みだったんです。
なんで別れたか?うーん・・・3年くらい付き合ったんですけど、なんかうまくいかなくなって。特に大きな喧嘩をしたわけでも、どちらかが浮気をしたわけでもないのに。彼から「距離を置きたい」て言われてそのまま。
別れてからも、何度か連絡を取ったりしたんですけど「もう一度」とはならなかった。
それ以来、どんな人に出会っても「彼が良かったな」て思っちゃう。
嫌なとこもあったと思うんですけど、思い出せないんです。
幻想の中に住み続ける彼
「せっかくなら笑顔で別れよう」なんて、昔のドラマや漫画ではよく聞いたセリフだけど、なんとなくうやむやのまま別れてしまうと引きずる期間が長くなってしまうように感じるのは気のせい?
相手の嫌なところを言って、もしくは自分の嫌なところを言ってもらって「なんだとコンチキショー!」て頭にくるくらいの方が「合わなかったんだな」とすんなり脳内で納得できる。
3年も付き合って喧嘩も浮気もしてないのに「何となく終わった」なんて、んなアホな。
逆に言えば、3年も付き合ったのに本心で話し合える、不満を言い合える、お互いの関係をより良くしていこうと協力し合える関係になってなかったんだから、終わって当然とも感じられる関係なのに、その恋が心を占めていて先に進めないなんて、なんともったいないことよ!
おわりに
彼が「理想の男性」だったことは事実として受け止めるとして「理想の男性とはうまくいかなかった現実」もまた事実である、てことに気付かないと同じ失敗を繰り返してしまう。
いい会社に勤める、背の高い中肉中背の理想の男。捕まえたところまでは良かったけど、今の自分ではうまく付き合えなかったという現実。
じゃあ、自分のどこを変えればうまく付き合えたんだろうかと考える時間。
考え始めたらわかるはず。自分に足りなかったもの。そこを補充することを目指し始めたなら、いつまでも終わった恋のことばっかり考えている時間なんてないはずだ。
そりゃ、彼を思い出す日もあるかもしれないけれど「たった一人の男」に想いをはせるだけで人生を消化してしまっていたら、そりゃ、いい恋愛になんて巡り合えるわけがない。
彼ばかりを想って彼でいっぱいになってしまう自分。その想いこそが「理由なき負担」になることも忘れちゃいけないよ。
人間のいいところって色々だ。
終わった恋に想いをはせて、ただ毎日が過ぎていっている女性と時々は終わった恋を思い出しつつ、自分に足りない何かを足そうと毎日を楽しんでいる女性と、どちらが魅力的に映るかは一目瞭然。
記憶の中にいるセピア色の彼のいいところばかりを思い出して、目の前にいる人のいいところが見えないなんて、それは「彼を忘れられない」んじゃなくて、自分のバージョンアップを自分が怠っているだけだ。
男で男は消えない。過去の男を「青春」として消せるのは大人になった自分だけだ。
彼を忘れる為の作業は、新しい彼の仕事じゃなく自分の仕事。
時は絶えず流れているのに、セピア色の彼が占める時間しかない24時間を過ごしている自分を戒めなきゃいけない。(川上あいこ/ライター)
(古泉千里/モデル)
(柳内良仁/カメラマン)