「出会ったときに『ビビッときた』男性は運命の相手である!」という言葉があります。
運命を信じてひた走るその思いは、もしかしたら思い込みや危険なストーカー的思想と紙一重的なところもあると思いませんか?
その実例として、筆者が企業のメンタルカウンセラーだったときに知り合ったあるカップルのお話をご紹介しましょう。
彼女(Aちゃん)と彼(Y先輩)が出会った時には、彼には別に好きな女性がいたそうです。
それでも、彼女は、「彼はわたしの運命の相手だと思う」と3年間も信じ続けたのだそうです。
そしてその想いは叶ったのです。彼女の想いには、ストーカー的思想とは決定的に異なる点があったのです。
出会いはボランティア
筆者がご紹介したいカップルの出会いの場は、老人ホームでした。Aちゃんは高校のボランティアサークルで老人ホームのお手伝いをしていました。
Y先輩は専門学校の介護実習で老人ホームに訪れていました。しかもY先輩には、その時同級生の彼女がいたのです。
そんなこととはつゆ知らず、AちゃんはY先輩に一目惚れをしてしまいました。彼女には運命の出会いのように本当に「ビビッ!!」と感じたのだそうです。
Y先輩の仲間の輪の中にAちゃんの居場所ができてしまった!
次の週に再会した時、他の仲間たちと一緒に、老人ホームのスタッフの草野球チームの野球の試合観戦に行くことになりました。
AちゃんはY先輩に食べてもらうために、みんなの分と一緒におやつのマーマレードを作っていきました。
しかし、AちゃんはそこでY先輩の恋人を紹介されてしまったのです。Aちゃんは、Y先輩に彼女を紹介されたとき、もう頭が真っ白になって、気がつくと、みんなと仲良くすることで、自分の気持ちをカモフラージュするのに必死になっていたのだそうです。
理由はどうであれ、Aちゃんの振る舞いは、Y先輩の友人たちに好感を持たれたのでした。
その一方、先輩が連れてきた彼女は、周囲を気遣うことをせず、Y先輩にだけ可愛く振舞っていたので、あまり良い印象を持たれなかったようです。
そして、その日を境にAちゃんは、Y先輩の仲間たちのグループに誘われていろいろな場所に出かけていくことが多くなりました。
彼女の「先輩の前で可愛い女の子でいたい!」「先輩に良く思われたい!」という一途な気持ちがY先輩の仲間たちの間でも気に入られて、みんなから可愛がられたのでした。
「AちゃんはY先輩のファン!」の立場を貫いた?
Aちゃんは先輩に彼女がいることを知っても、「『ビビッ』ときたんだけどな……先輩には私の方がお似合いだと思うんだけど……」という気持ちが消えなかったのだそうです。
そして、その気持ちを打ち消すのではなく、心の片隅にとりあえず置いておいたのだそうです。
そして、そのことをAちゃんは普通に周囲に漏らしていました。
普通なら、そんなことを言う女性は、「ストーカー」だと思われて周囲から諦めるように注意や非難を受けるかもしれませんが、Y先輩の彼女の印象があまりにも悪かったので、Aちゃんの意見は尊重されてしまったのです。
先輩の友人たちは、Y先輩の彼女がAちゃんであった方が楽しい時間が過ごせると考えたようです。
ときは動く?運命なら流されてみるのもよいのかも?
ところが、運命はAちゃんの味方だったようです。3年の時間がかかってしまいましたが、Y先輩は彼女とお別れする結果となり、Aちゃんは、先輩の周囲からその知らせを速報として受け取ったのだそうです。
後は、Aちゃんの気持ちを周囲が思いっきり後押ししてくれました。Aちゃんにとって、「先輩とのデートはいつも大勢で」が普通でした。Aちゃんの居場所も、2人の時間も、周囲が全てお膳立て。
こうして、あれよあれよと皆からもてはやされて、文化祭でパートナーに!それから、2人でドライブに行くチャンスを作ってくれたのも周囲の仲間たちだったそうです。
そしていつの間にか、AちゃんとY先輩は、誰もが認めるカップルとなっていきました。Y先輩が告白したわけでもなく、Aちゃんが先輩に告白したわけでもありません。ただ成り行きで……。
“とき”がお膳立てしてくれることもあるのかもしれません。白黒はっきりさせることもなく、ただ運命を信じて待っていただけでAちゃんは大好きな先輩の彼女になりました。
運命はときの流れと周囲の協力が必須!?
みなさん!大好きな彼にビビッと感じたからといって、相手には彼女がいるのに、自分の勘を信じて3年も待つことができますか?
Aちゃんの場合、周囲が応援し、周囲が動いて先輩との関係を築いていったかのようなところがあります。
言い換えれば、もしY先輩に彼女がいなかったら、Aちゃんは、先輩の仲間たちの間でマスコットのような存在にはなれなかったのです。マスコットのような存在になれなかったら、Aちゃんは先輩の傍にずっといることは叶わなかったのです。
結果的に、AちゃんとY先輩が近づくために、先輩の彼女は不可欠な存在だったことになります。
ときの流れに身を任せ、自分の気持ちに素直な女性だけが、運命相手に巡り合えるのかもしれませんね。“ストーカー”と“運命”の違いは、偶然を引き寄せる力になってくれる周囲の協力の有無かもしれません。
いくらビビッと来ても、周囲の協力がないときは勘違いなのかもしれません。
というよりも、運命の相手との巡り合いは、一度でうまくいくのではなく、紆余曲折があって、困難・試練を乗り越え、さまざまな幸運や協力を得て、ゴールインできるものなのかもしれませんね。
(鶴山あずさ/ライター)