皆さんこんにちは。15万本以上の爪を施術してきたネイリストでスキンケアカウンセラーの川上あいこです。ネイルサロンは不思議な空間。手を握り合ったまま過ごす約2時間。
手を握り合っているからなのか、リラックスした密室空間がそうさせるのか、秘密の内緒話しを打ち明けて下さる方がとても多い場所でもあります。
親しいのに友人関係ではない。もしかしたら来月は会わないかもしれない。
近くて遠い関係だからこそ、プライドも恥もなく自分の真っ黒な本心さえも吐き出せてしまうのかもしれない。
そんなサロンワーク中のみんなの恋のお話を切り取ってお送り致します。
※許可を頂いたものだけ掲載しています。
※個人を特定できる情報が含まれないよう職業等にフィクションも織り交ぜています。ご了承ください。
浮気男は妻を信じる
「不倫やめちゃったんですよ。」心なしかスッキリした顔でお客様が笑う。2年は付き合っていただろうか?不倫の恋。毎月、恋の進行を話しながらネイルをしていた時間はもう終わってしまうのか。
とはいえ、若くてキレイなこのお客様が、やっと不倫から抜け出したんだという何とも言えない安堵感と、笑顔の後ろでいっぱい泣いたのではないかという心配とが交差したりもする。
「なんかあったんですか?」
不倫の恋は終わる方がいいに決まってる。だけど、恋の終わりには違いない。やっぱり心配にもなる。
そして、万が一にも「妻バレ」なんて局面を迎えたのであれば、本人はもちろんのこと、彼も彼の妻もそして少なからず関わる周りの人まで含め、誰1人として幸せにならない結果なわけで。
「なんかねぇ。彼、奥さんのことすごく信じてるんですもん。むなしくなっちゃって。」
不倫の恋といえども恋愛であることに変わりはない。最初こそ、お互いを知ることにそして気持ちを確認し合うことに精いっぱいで、夢中になってお互いの話しを重ねるのに、2年も付き合っていると、恋人同士が家族や親せきの話しをし始めるのと同じで、彼の家族や子供の話しがちょいちょい挟まれるのだ。
フリーの彼にとって、親や兄弟が家族であるように
不倫の彼にとって、妻や子供は家族であるわけだから、至極真っ当といえば真っ当なんだけれど。
「彼は奥さんのこと女としては見れないというわりに、子供の母親としてとても信頼しているのがわかるし、彼は浮気をするけれど“嫁は不倫とかできる人間じゃないから”“もう女じゃないから”て言うんですよ。」
「えーっと・・・彼的には“女として見ているのはお前だけだ”って言いたかったんですかね?」
「多分そうなんです。でも、嬉しくないじゃないですか。家は嫁に任せてあるから安心なんだとか、嫁は不倫とかしない人間だからとか、そこまで信頼してるなら、自分も家族に向き合えばいいのに“女として見れるのはお前だけなんだ”ってただヤリたいだけじゃん!って頭にきちゃって。」
「あー・・・それはもう、目が覚めてしまいましたね。」
「そうなんです。最初からそうだったわけじゃないのかもしれないけど、長く付き合う内に“不倫でもいい女”の認定されたかと思うと悔しくなって。目が覚めました!」
若くてキレイなんだから不倫なんてもったいないよ。これからいい男出会い放題だよ。羨ましいよ。と励ましつつ、その日の施術がどんどん進んでいく。
「でもアレですね。愛した男が妻を信頼している男で良かったですね。きっとそういう男性って家庭でもいい夫なんだと思いますよ。
愛した男が妻の悪口ばっかりで、家庭でも暴力ばっかり!みたいな男だったら嫌ですもんね。」
「確かに!!!そうですね。いい男だったってことにしちゃいます。」
もう不倫の恋はしないだろうなという吹っ切れた笑顔で笑う彼女に心からホッとした日だった。
おわりに
私の男友達でも不倫をしている輩というのは何人かいる。夫婦の問題というのは複雑だし、不倫をきつく咎めるような会話はしたことがないけれども、不倫をする男性の「奥さん信じている率」は相当高い。
「ウチのはもともと体力ないからセックスレスでもいいんだ。」
「毎週ママさんバレーやってるから浮気なんかする暇もないしね。疲れてセックスもしたくないみたいよ」
「厳しい家庭で育ってるから、浮気なんてできる嫁じゃないんだよね。」
「専業主婦だし、子育てで男と出会う暇なんてないからね、うちの嫁。」
いやいやいや(笑)その場にいる女性陣はみんな呆れながらひっくり返る。
「体力がないからって20代でセックスレスを良しとするかー!」
「バレーやってる体力ある30代なら精力もあるに決まってるじゃないかー!」
「厳しい家庭で育ったって・・・あなたの嫁40歳過ぎたいい大人だよね?」
浮気を重ねる男性陣は、なぜか、清く明るく妻を信じている。
女性陣が総つっこみで「いやいやいや(笑)専業主婦でも出会いなんかいくらでもあるよ。」と失笑しても「あ、うちの嫁はないよ。ほんと。そういうんじゃないし」と明るく笑う。
自分の結婚した相手は、妻になったから、子供ができたから「女」から卒業したと心から信じているのだろうか?
世の奥様方。女性の浮気がバレない理由がなんとなくわかりませんか?
夫婦は鏡だ。なのに、自分は浮気していても、相手はしない人間だとなぜに思い込めるのかといったら、それはやっぱり奥様という人間を心から信頼しているからなのであろう。
それを家族愛と呼ばずして、何を家族愛と呼ぶのか。
もちろん、世の中には「旦那は浮気してるけど私は致しません」という奥様もたくさんいらっしゃる。
だけど、浮気しないことは女として引退したこととイコールではないし、必要とされなくてもいい ということでもない。
妻として、母として、そして女として。1人の人間として、必要とされたいと願わない人なんていないのではないだろうか。
妻も母も女も、どれも大切な時間で、女性はその都度仮面を付け替える。
妻を信じている浮気夫の皆さん。
夫から女に見えなくなった女性と言うのは、夫の前では女の仮面を脱いでいるだけで、他の場所では女の仮面被ってるかもよ?ねぇ、女性の皆さん。
(川上あいこ/ライター)