ネイルサロンは不思議な空間。
◇恋に落ちる
恋に「落ちる」とはまさに文字通りで、心の準備もできなければなんの用意をすることもできずに人は恋に落ちる。
用意ができれば相手を見極めることもできるはずなのに。突然落ちてしまうから恋と呼ぶのかもしれないけれど、「なんでこんな人に…」なんて、ため息をつきたくなるような相手でも容赦なく落ちるのが恋だ。
「こんな恋愛イヤなんですよーーーーぉ。」本心なのか笑うしかないのか、おちゃらけて叫ぶアキさん(仮名)の恋する相手は、まさに「チャラ男の極み」。うまくいってもいかなくても傷つくこと間違いなしなのである。
◇チャラ男は点火がうまい
アキさんが恋に落ちたのは「抱きしめられたから」だ。「スタートからチャラい雰囲気が漂ってますね」なんて思わず笑ってしまった。
「だって、想像してみてくださいよ!顔が好みのオトコが急に抱きしめてくるんですよ!!”俺を一番頼ってよ“とか”帰んなよ“とか囁いてくるんですよ!恋に落ちるでしょー?!」
「それは恋に落ちますね(笑)顔が好みときたら一発です。」
笑いながら同意しつつも、内心は感心もしてしまう。チャラ男はとにかく恋心の点火がうまいのだ。チャラ男にとっては、点火できるかできないかのゲームなのかもしれないけれど、とにかくうまく火をつける。
「そんなことを散々言っておいて、マメに連絡もしておいて、こっちがどうにも気になってきた頃には連絡が途切れがちとか、ほんとこんな恋愛嫌なんですけどー!どうしたらいいんですか、これー!!」
雄叫びに近いアキさんの心情を思うと笑ったらいけないとは思いつつ、どうしても笑いが堪えられない。ごめん、アキさん(笑)
◇チャラ男に恋をする
チャラ男ってモテるのだ。どうしたら女の子が自分を好きになるか?どうしたらいろんな人の愛情を集められるか?それがわかっていて、自分に興味がない人ほど振り向かせたくなるし、振り向くまでたくさんの言葉を並べることもできるのだ。
「そのときは本心だった」なんてうまいこと言って。
チャラ男との恋は、うまくいっても傷つくことはみんなわかっているのに、好きな気持ちがある間は、どうしても期待してしまう。自分と恋愛したら変わってくれるんじゃないか?とか。
そして思い出してしまう、あの日の優しい囁きを。
笑いをこらえながら話す私に「笑い事じゃないですよ!」なんて息まきながらアキさんが言う。
「そうなんですよ、あの日のあの彼を思い出して信じたくなるんですよ。」
でもね、それ、幻想ですから。例えその瞬間は本気だったとしても、現実は「今」だけ。
囁いてくれたその瞬間も、熱く抱きしめられた瞬間も「過去」。チャラ男が今もその気持ちを持っているなら、今日だって抱きしめにきてくれるはずなんですよ!
◇おわりに
「恋心が少しでもある相手なら、今、抱きしめにきてくれるはずなんです。せめて、明日とか今週中とか。抱きしめてくれたのも囁いてくれたのも過去なら、チャラ男はもう次へいっちゃってるんですよ。諦めがつかない気持ちは”アレはなんだったの?!”ていう消化不良だけで、そんなに深い恋心じゃないですよ。気のせいってことにしましょ!」
勢いよくアキさんへ問いかけてみる。
「そうかなぁ…なんか悔しいしモヤるなぁ」
だってね、アキさん。よく考えてみてくださいよ。男性だって、恋する相手にはドキドキするはずだし、拒否されたらどうしよう?とか考えながらも、勇気を出してリードしてるんですよ。
そんな、いきなり甘い言葉並べたり、照れも決心もなくすぐ抱きしめたりしてくる男なんて、たいした恋心はないに決まってるじゃないですか!
「やっぱりそうですよね。なんで好きになっちゃったんだろう?」
チャラ男は恋の点火がうまい。わかっていても思わず点火されてしまった日には、友だちへ報告してみるのが一番いいかもしれない。
友だちは冷静な視線で現実を教えてくれるはずだからだ。
「好みのオトコに抱きしめられちゃったよ。ラッキー!くらいに思って、もっと真剣に恋愛できる人を探しましょうよ。」
なんだかすっきり顔のアキさん。次に会えたときにはチャラ男のこと忘れられているといいけれど…。
「悔しいけど次いきます!」アキさんの決意が鈍らないことを祈るばかりだ。(川上あいこ/ライター)
(かしゅかしゅ@cashe_cashe2525/撮影)