失恋というのは、少々むずかしく言えば、精神的に小さく死ぬことです。
■問題は復活のほうです
精神的に死んでしまうのは、どうしようもないことだったりもします。
彼のほうから一方的に別れを切り出されたら、もう死んでしまうしかないわけで、死ぬのか生きるのかという選択肢なんてほぼないでしょう。
問題は「復活」のほうです。
復活を遂げる過程において、女子は「いい女性」に生まれ変わります。
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いい女性というのは、人の気持ちの痛みを知っている人ということです。
人の痛みを知っている人は、正直になるべきときに正直になれます。少々計算高くやらないといけないときには、少々計算を働かせることができます。
そして逃げるべきときに、逃げることができる女性です。
言い方を変えれば、自分を弱く見せる必要があるときに、ちゃんと弱く見せることができる女性です。
■失恋のウソ
失恋は人を強くさせるなんて言われることもありますが、それはある面では正解でありつつも、ある面では不正解です。
人はいつもいつも強くいなければいけない、ということはないもので、弱く存在する必要があるときだってあります。
そういうときに、素直に自分の弱さを見せることができる……これは恋愛においては、失恋しか教えてくれないことです。
もっと厳密に言えば、失恋から復活する過程においてしか学ぶことができないことです。
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失恋から立ち直る、つまり復活するというのは、自分の気持ちの中の見たくない部分をイヤと言うほど見なくてはいけない作業です。
彼に振られて、そこから復活を遂げるなら、彼に対する未練とか嫉妬心とか復讐心とか、そういう自分の心のダークサイドを見つめないと復活することは不可能です。
ある日、かわいい聖歌隊をたずさえた神さまが来てくれて、「はい、ではあなたを今日から復活させてあげましょう」と言ってくれるのであれば話は別ですが、そんなことはありえない。
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自分の中の見たくない気持ちを見て、ダサいとわかっていてもダサいことをしないと、失恋から立ち直って復活を遂げるなんて無理です。
見たくないものをたくさん見て、やりたくないことをたくさんやってきた人は、自分の弱さに正直になれます。
そして「失恋は人を強くさせます」とか「いい女性とは強い人のことを言います」という世間のセオリーの背景を知ることができます。
10回失恋したから、わたしの心はもうどんな失恋を経験しても痛みませんという人なんていないわけですから、そういう言葉にはちゃんと「背景」があるわけです。
だから失恋を経験しないといい女性になれないのです。(ひとみしょう/ライター)