皆さんこんにちは。15万本以上の爪を施術してきたネイリストでスキンケアカウンセラーの川上あいこです。
◇ワタシ以外ワタシじゃないの
施術中、お客様であるマリコさんに見える位置にTVは設置してある。
ここのところ連日でTVに流れる音楽に
「ワタシ以外ワタシじゃないの~て覚えちゃいましたよね」て会話を何回しただろうか。
ワタシ以外ワタシじゃないの。頭の中でエンドレスだ。TVで流れる話題の人のプロフィールや噂、経歴や音楽に至るまで記憶に刻まれつつある。
「なんでこの人がいいんだろうねぇ。もっといい人いるだろうに」
きっとこの会話、私もマリコさんも、そして日本中が何度も誰かと重ねたのだろうけれど、私達他人はおろか、当の本人達ですら明確な答えなんてないんだろう。
時としてゲスなオトコは魅力的だ。
みんなに優しいオトコが優しくしてくれても「あの人優しいよね」で終わるのに、みんなに評判の悪いオトコが優しくしてくれると「なんでワタシにだけ?」なんて思ったりする。
昔読んだ少女マンガの世界のように、暴力的なクラスの不良が、自分だけにときおり垣間見せる優しさにキュンキュンするシーンと重ね合わせたりする。
「私だけに」優しい。
「私だけに」素直。
「私だけに」見せる顔がある。
「私だけ」特別な響きに眩暈がすると同時に酔い始める。
「みんなには見せないけど、優しい所があるんだよ」
ワタシにはわかる。ワタシだけは知っている。
恋愛においてのその特別感たるや、誰もは入れないVIPルームに入れるようになったような優越感とちょっと似ている。
ゲスなオトコほど「特別」が上手だ。
「私を選ぶ為に」こんなことをしてくれた。
「私を選ぶ為に」こんなことを言ってくれた。
「私を選ぶ為に」アレもソレも捨ててくれた。
普通のオトコは想像つくような普通のことしかしないけれど、ゲスだからこそ、びっくりするようなことをしてくれたりする。
他人ごとなら「ひどい」とか「幼い」なんて感じる出来事でさえも、自分の為だけにやってくれたと思った瞬間、「酷いけどそれだけ愛が深いから」「子供みたいに私に夢中」なんて、どうしようもない安酒みたいに一気に身体に回り始めてあっという間に酔い始める。
安酒って二日酔いも長引くんですよ。
恋は盲目とは良く言ったもので。
「ワタシの為に」は、時と共に変化して行くのに見えない。誰かに出来る仕打ちは、もちろんあなたにも出来るのに「ワタシが相手だから」「ワタシだから特別に」そういう行動を取ってくれたのだなんて信じ込んでしまう。
いやいや。
あなたもいつか「特別」じゃなくなる日が来るのです。
今、ゲスに泣かされている誰かと同じように、涙を流す日がくるのです。
「それ、第三者だとわかるのに、酔いが回った当事者だけはわからないんだよねぇ」マリコさんも私も第三者だからわかる。
◇おわりに
安酒は身体に良くない。
ベロンベロンに酔っ払って、記憶を無くして、次の日も胃液を吐いてボロボロになってでも何かを忘れたい時にはオススメだけれど。
お酒と恋愛は選ばないと、身体もココロも思いの外ダメージを受ける時があるのだ。(川上あいこ/ライター)